「哀の川」 第三十一話
「マスター、覚えていてくれたのね。さすがだね。まあ結構良く来ていたから・・・フフフ。子供じゃないのよ、悪いけど独身!彼よ、年下だけど・・・」
「うっそう?そりゃ無いだろう!あの人と別れたの?仲良かったじゃない・・・玉の輿だっていつも言ってたし・・・」
「そうね、そう言ってたかも知れないね・・・浮気されちゃった・・・最低よね、傷付いたし・・・未練は無いけど、悔しいかな・・・もう恋はしない、結婚もしないよ。多分・・・この子はね純一って言うの。覚えておいてね。得意様になるかも知れないから、関学行ってるし。きっと友達つれてくるよ、ねえ」
「杏ちゃん・・・いい店だね、ムードあるし、親しみやすい感じがする」
「そうでしょ・・・マスターはねいろいろと相談に乗ってくれるよ。頼りがいあるから。私が学生の頃からの付き合いなの」
店の名前は、スターキャッツと言った。カウンターとテーブル二つの小さなパブで、マスターと女性店員が交代で二人待機する店だった。
作品名:「哀の川」 第三十一話 作家名:てっしゅう