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てっしゅう
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「哀の川」 第三十一話

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父たちのときとは違い静かなムードで食事をしていた。時折杏子は母を気遣い、何かと心配を口にしていた。身体が言うこと利かなくなったら、戻ってくるから遠慮しないで言うんだよ、とも話していた。

「杏ちゃん、今お婆ちゃんに言った事、ほんと?帰ってくるって・・・」
「ええ、だって娘だよ。両親の世話して当たり前じゃない?純一は麻子さんや直樹の世話は嫌なの?」
「そんなことは無いよ・・・けど、東京と神戸じゃ離れているから、そう感じただけ」
「もともとはこちらで育ったのよ。全然こちらのほうが住みやすいのよ、私には・・・純一だって東京のほうが住みやすいでしょ?」
「そう言われればそうだけど・・・」

食事が済んで、両親と家に戻り、杏子は純一を誘って元町に出かけた。未成年ではあるが、保護者つきだから良いかと、昔行きつけだったパブに入った。何年ぶりだろう、景観は少し変わっていたが、中はほとんど当時のままであった。少し頭が薄くなっていたマスターが、懐かしそうに杏子の顔を見て、「いらっしゃい!久しぶりですね、元気にしてたの?ん?子供さん、男前だね、杏ちゃんに似て」と声をかけてくれた。