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てっしゅう
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novelistID. 29231
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「哀の川」 第三十一話

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純一は複雑で深い男と女の関係をまた一つ思い知らされた。話し終えて、杏子と純一は身体を寄せ合い、キスをしてそのまま眠りに入った。寄せ合う身体のぬくもりが、二人の過去を永遠に消さないように通い合わせた。杏子はこのまま時間が止まってくれればいいと感じ、純一は自分が若すぎることを悔やんだ。時は、いたずらだ。時間のずれがもしあったら、結ばれていたに違いない・・・そう思えて哀しかった。

三宮の祖父と祖母は出て行ったきり帰ってこない純一と杏子を心配していた。
「あなた、もう12時回っているのよ。何しているのかしら、あの子達・・・」
「母さん、心配するな。杏子はもう大人だから。純一だってそうじゃないのか」
「ええ、そうね。何か積もる話でもあるのよね、きっと・・・」

祖父は昔、直樹と杏子の関係が危なかったことを思い出していた。強く直樹に関心があった杏子の想いを知っていたからだ。今もし純一に同じ想いを抱いていたとしたら・・・自分とは違う誰かの血が杏子をそうさせるのだと、いや、母親の血なのかも知れない。娘とはいえ、悲しい性に親として諦めざるを得ないことなのか・・・杏子の幸せを願う気持ちは母親と変らないが、どうしてよいのか解らないことが寂しかった。