最後の魔法使い 第二章 『学者さん』
「それってどういう―」
アレンが言い終わる前に、ジュダはアレンに近寄って、思い切り抱きしめた。「マチルダから聞いているよ。よく来たね、アレン。」
アレンは抱きしめられることに慣れてはいなかったので、手足は棒のようにピンと伸びたままだった。それでも、不思議と居心地の悪い思いはしなかった。シャツからはマチルダがいつも使っている洗剤のにおいがしていたし、リカーのスパイスの香りもした。
「何だ、二人とも知り合いなんじゃねぇか。」とディディーが横から言った。
「親戚なんだ、実は。」ジュダがアレンから離れながら言った。「いつか来るだろうとも思っていたけどね、まさか君が連れてくるなんて驚いたよ。アレンが最初に話しかけるのがまさか浮浪者だったなんてね。きっと商店のおかみさんか誰かに聞くものだと思っていたよ。」
「俺も驚いたよ。まぁ俺が似たような格好してるから、親近感っていう奴がわいたんじゃねぇかな。」ディディーはへっへっと笑った。
「そうかもね。」ジュダはほほ笑んで、アレンに向き直った。「さて、アレン、君には話さなければいけないことがたくさんあるんだ。君も、聞きたいことが山ほどあるだろうし。でもまずは何か食べようか。」
ジュダがそう言った途端、アレンのお腹がまたぐぅと鳴った。
作品名:最後の魔法使い 第二章 『学者さん』 作家名:らりー