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最後の魔法使い 第二章 『学者さん』

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アレンはマントを脱いで、ドアの横にあった椅子にそれをかけ、年季の入ったオークの椅子に腰かけた。外見とは裏腹に、家の中は暖かく、ずいぶんと心地よかった。部屋はいくつかあるようで、アレンたちは居間兼キッチンにいた。居間の一番奥に、装飾された棚と、小さいストーブがあり、その横には二人掛けの小さいソファが置かれていた。定位置なのか、ディディーはそのソファにどっかりと座り、リカーの入ったマグを嬉しそうに両手で抱えていた。
ジュダはキッチンの戸棚からマグを取り出し、アレンに差し出した。「君も飲みなさい。温まるよ。」
アレンはありがとうと言って、ストーブの上で湯気をたいていたリカーをマグに注いだ。リカーはロウアーにとっては欠かせない飲み物だ。リカー特有の、ふんわりとしたスパイスの香りがいくらかアレンを落ち着かせた。アレンはマグを両手で包みこんで、そのぬくもりを感じながら、一口、二口とリカーを飲んだ。ここ数日で初めての温かい飲み物だった。アレンの表情が少し和らいだのを見て、ジュダは満足そうにほほ笑んだ。
自分のマグの中のリカーを飲みほしたディディーは、まだ二人を紹介していなかったことに気がつき、あっ、とばつの悪そうな顔をした。「ジュダさん、そいつアレンっていうんだ。」と、アレンを指差しながら言った。
「よろしく、アレン。私はジュダ・ジアーズだ。」ジュダはにっこりとほほ笑んで、スッと手を差し出した。
「よろしく…ジュダさん。」アレンは差し出された手を取って握手をした。玄関先では、ジュダはいかにもアレンの事情を知っているように見えた。だが、今の表情からは、アレンはジュダが自分がだれなのかわかっているのか、読み取ることができなかった。ディディーは二人が握手をしたのを見て、満足そうにうなずいた。
「ところでだな、ジュダさん。こいつ、ウェストから来たらしいけど、魔法使いなんだ。」まるで何でもないことかのように、ディディーはどうどうと言った。「俺見たんだけど、煙草に自分で火をつけられたんだよ。」
全く隠そうともしないので、アレンはぎょっとした。この人がジュダ・ジアーズだからなのか、それともディディーは人の秘密をこうも簡単に言ってしまうのか、アレンにはわからなかった。
一方、ジュダは特に驚いた様子もなかった。ジュダはアレンと目が合うと、にっこりとほほ笑んだ。「そうか。じゃあアレン、ここで火をつけられるかい?」とジュダが問いかけた。「ほら、ストーブの火が消えそうだろう。」
アレンはストーブに目をやった。さっきまで赤く燃えていた薪は黒ずんで、煙を上げているだけだった。
アレンは火のつけ方などわからなかった。さっき煙草に火をつけた感覚を思い出そうとしたが、全く無意識だったせいか、どうしても思い出せなかった。
指先に集中すればいいのか?それとも、手のひら?呪文か何かあるのだろうか…。
「できません。」アレンは口を開いた。「その…さっきが初めてだったんです。やり方も知らないし、そもそも俺はロウアーとして育ったから…俺はロウアーなんです。アッパーの魔法なんかわからないです。」
「そうだな。それが正しい答えだ。」満足そうにジュダが言った。「今のところは。」