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さ・く・ら

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らぷそでぃ in 井の頭



日本人にとって桜は特別な意味を持つ花のようで、なぜか酒盛りなどをしてしまう。落語の長屋の花見は、お酒は番茶を薄めたもの、蒲鉾は大根、玉子焼きはタクアンだが、結局最後は酒盛りになってしまう。

桜の花の盛りは短く、休日しか行けない人は大雨でも降らない限り酒盛りをしてしまう。花見の名所は朝早くから場所取りに来た人たちがレジャーシート、あるいは大きなブルーシートを広げた所にぽつねんと座って携帯をいじっていたりする。

その年は、薄曇り。気温もまずまずだったが、春一番が吹かずに過ぎたせいか、丁度桜の見頃の休日、お昼頃になって強い南風が吹いた。

ここ井の頭公園は、おりしも各自宴会の真っ最中だった。周りより低い位置にあって盆地状の地形、あたりはアルコールの匂いが充満している。もし、お酒の飲めない人が知らないで通りかかったら、その匂いだけで酔っ払ってしまうかもしれない。

新入社員の歓迎会を兼ねての花見を始めたグループでは、もう、どこからどこまでが自分たちか他人か分からないほど密集した中での酒盛り。そこに吹いた南風は、まず空になった紙コップを飛ばし、お皿に盛った枝豆を隣のグループのお皿に着地させた。

慌てて押さえようとして、一升瓶を倒してしまった男は、さらに慌てて一升瓶を起こそうとして、だらしなく投げ出していた女性の足首を掴んでしまった。

「いやん!!」
酔っ払っている女が色っぽい声を出す。普段なら男はパニックになりそうなシーンだが、男も酔っ払っていて女と見つめ合う。その男の顔に、白いレジ袋が飛んできてへばり付いた。急に目の前が真っ白になった男は、レジ袋をとり払おうとして勢いあまって、頭髪まで、いやカツラを一緒に外してしまった。

急に涼しくなった頭をなでて、男はヒャァ!! と悲鳴をあげた。男が倒した一升瓶のお酒をズボンに吸わせてしまった男が、その涼しい頭を叩いた。

それがあまりに言い音だったので、男の上司がリズム良くその頭を叩きながら歌い始めた。

作品名:さ・く・ら 作家名:伊達梁川