さ・く・ら
一度弱まり、皆を安心させて南風が、また強く吹いた。最初は風に大騒ぎしたものの、お酒が入ってハイテンションになっている所に、この強い南風でさらにテンションが上がっている。桜の花びらも多数舞っているのだが、果たして風情を楽しんでいるものはいるのだろうか。
隣からフライドポテトが飛んで来て、男たちの所からサンドイッチが別の隣へ飛んで行った。追いかけていった男の同僚は帰ってこなかった。みると隣のグループの所でお酌をされていた。そのかわりという訳ではないだろうが、やはり飛ばされた焼き鳥を追いかけてきた中年女性にビールを勧めているのは社長だった。
カツラを外したままの男は、新社員に大きな口を開けさせて、離れた所からポテトチップスを風に乗せて食べさせようとしている。しかし気まぐれな風は、別の所から飛んで来たさきイカをその口に運んだ。新社員は反射的にそれを咀嚼し怪訝な顔をした。
自分たちのオツマミが貧しいグループは、風上を向いておいしいオツマミが飛んで来るのを待っているようだ。もちろん花吹雪は目に入っていないのだろう。
大騒ぎの中、酔いつぶれて横になっている者もいる。わき上がる嬌声。狭い場所で踊る者、大笑いする声。強い風をものともせず、大宴会場となった井の頭公園。このバカ騒ぎはいつまで続くのだろうか。
おしまい