アイラブ桐生 第4部 44~46
京都の花街は全部で6つあります。
このうちの島原を除く、四条河原町周辺の
祇園甲部、宮川町、上七軒、先斗町、
祇園東の5つを「五花街(ごかがい)」と呼んでいます。
「五花街」は、それぞれが守り育んできた文化や伝統を、
今日に至るまで連綿と引き継いでいます。
レイコから、短い便せんの便りが届きました。
駆け落ちをした二人は藪塚温泉に数泊したのち、
ホテルの板長の口添えをもらって、
草津温泉へ足を運び、無事に仕事にもついたと書いてありました。
何かの時のためにと、先方のホテルと、
アパートの連絡先も書いてありました。
先方からの意向によるもので、
「忘れずに書き添えてほしい」と懇願されたと有ります。
短い文章の後は、わたしは元気ですと走り書きがあるだけで、
あとの3枚は、まったく白紙のまま同封されていました。
葉書でも間にあったのに、と思える文面でした・・・・
そういえば、新任のマネージャーは
元マナージャーの後輩にあたります。
朝礼の新任あいさつの後で、ぽんと肩をたたかれました。
「アルバイトで主任と個室付きは、このホテルでの快挙だ。
大したもんだ。
まぁ、ホールは君にすべて任せるから
よろしくやってくれたまえ。なにかあったら俺の面倒も見てくれよ。
ああ・・・・そうだ。
昨夜、先輩から電話があって
場所は言えないが元気でやっているそうだ。
君のこともよろしくと言っていた。
先輩が元気でいることは俺も嬉しい、
まぁなかよくやろうぜ、快男児くん!」
それだけ言うと新マネージャーは、颯爽とした足取りで去って行きます。
ここのホテルでは、男女の社内恋愛は絶対がついている、
禁止事項のひとつです。
幸い、元マネージャーは、一身上の退職ということで落着をして、
(ひとの噂では)離婚調停の方も、
無事に決着するという方向で収まりつつありました。
それにしても人生というものは、一寸先が解りません。
後で聞いた話ですが、今度のマネージャーもやはり
女性問題で一時的に失脚をして、
数年ほど都落ちの処分となり、地方のホテルへ飛ばされていました。
それが今度の急な人事で、見事に本館のマネージャーに返り咲きました。
女遊びも(実は)有能の証なのでしょうか・・・
まか可思議な話です。
そういえばもう新マネージャーは、
もう誰それと怪しい、そんな話が誠しやかに飛び交いはじめました。
震源地はいつもの、まかないのおばちゃんや、掃除のおばさんたちです。
しかしこれがちゃんと的を得ていて、きっちりと当たるから、
これまた不思議な話です。
今日は、お千代さんの部屋へお客さんが来ていました。
作品名:アイラブ桐生 第4部 44~46 作家名:落合順平