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アイラブ桐生 第4部 44~46

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 「あんたはんは、いったいどちらのお弟子どす?」


 おばあちゃんには、そんな風に笑われてしまいました。
源平さんも、お千代さんが惚れ込んだというだけあって、
腕の良い金箔職人です。
その源平さんの所へ、可愛いお嬢さんが訪ねてきました。
まだ見た目が中学生くらいに見える、幼なすぎる感じの女の子です。




 「おちょぼだよ。」


 源平さんは目を細めます。
舞妓を志す女の子は、屋形(やかた)と呼ばれる
プロダクション(置き屋)に引き取られ、
一人前の芸妓になるまで、ここでの生活がはじまります。


 食事や着物、お稽古代からおこずかいまで、
すべての経費を屋形が負担をします。
「おちょぼ」は、舞妓になるための仕込みの期間(約一年間)の間に
言葉や立ち振る舞いから、舞いや鳴り物など、
必要とされる芸事の取得を目指します。
これらの習いごとが及第点に達し、お許しが出てはじめて舞子になれます。
仕込み期間中の女の子のことを、「仕込み」といい、
別名を「おちょぼ」と呼んでいます。



 「へぇ~君は、舞妓さん志望なんだ。すごいねぇ。
 でもなんで、今時、舞妓さんなんかをえらんだわけ?」


 「うちは、馬鹿やし、取り柄もないし、
 舞妓しかなれへんとおもったんどす。
 いけずやわ(意地悪)。このお兄ちゃん」


 見かねたお千代さんが助け船をだしてくれました。


 「この人は、東男(あずまおとこ)ですが、
 ほんまにちょっといけずです。
 東男に京女とは良くいいますが、ぼうやと春ちゃんは合わないようです。
 ねぇ~、春玉(はるぎょく)ちゃん」



 花街界というものが馬鹿では務まらないことは、
この子のほうが良く分かっています。
この子は、源平さんが定宿にしているお茶屋さんの、
いつも贔屓にしている人気芸妓の、その妹ぶんにあたりました。
舞妓修業の第一歩は、先輩芸妓に姉妹の契りを交わすことから始まります。


 お千代さんとも顔馴染の屋形のおかあさんが、是非にということで、
お稽古の合間に立ち寄ることを許してくれたという、いきさつもあります。
花街や祇園の界隈では、こうして町ぐるみが総力をあげて、
一人の芸妓を育て上げていくのです。