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スペースコロニーの謎の殺人鬼

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再起動・過去に情報を送る技術を習得した私たち



 32世紀、宇宙物理学は進歩したが、光よりも早く移動する方法は見つかっていない。だがエミリーと天才物理学者ナオミは過去に情報を送ればコロニーは征服されない。ドッキング不能になり救助艇は制御できなくなり宇宙のゴミとなる。結果的にはコロニーの総督の命が救われる。

「今から1時間前に官僚たちによってコロニーの総督が暗殺されたわ」
電脳化したエミリーは、その情報を早く知った。コロニーの制御室にナオミとエミリーは入った。機械制御のプログラムを書き換えるエミリーは、脳内にあるマイクロマシンで普通の人なら2週間かかるものを、わずか60分で書き換えなければならない。必死になってプログラムを書き換える。

 スペースコロニーでは、地球から来た官僚たちがもっている光線銃の前では、何の抵抗もできない。総督は殺害され、官僚たちがエミリーが住むスペースコロニーを征服する。

「最先端技術で作られた光線銃ではかなわないわ。私たちには兵器を所有していないし」
「あたしたちのコロニーの人口は300人。こんな小さなコロニーに王国を建国しても意味ないじゃない。それを防ぐには1時間前の防御プログラムを送信して地球から来た救助艇の制御装置を変えるしかない」
天才物理学者ナオミは過去に情報を送ることを考えた。



 しくみは火星軌道上に巨大な量子加速機がある。核融合発電機が生きていれば、過去に情報が送れる。量子加速機を使ってミニブラックホールを瞬間的に発生させ、瞬時に圧縮した情報を送ることで、過去に情報が送れる。

 量子加速機を再起動させ、素粒子を加速させ衝突させると、ミニブラックホールが瞬間的に生成される。その間に、機械制御プログラムを1時間前の過去に送る。スペースコロニーから量子加速機を再起動させなけば話にならない。

 ブラックホールの内部は物理法則が通用しない。空間と時間との関係が逆転している。情報だけを過去に送ることができるかもしれない。


 コロニーのドッキングポートと救助艇の制御装置を操るプログラムをエミリーが打ち込む。ナオミがそのプログラムを極限的に圧縮する。わずか100分の1秒以内に瞬時に発生したミニブラックホールに送れるようにするためである。

 圧縮プログラムを数万チャンネルに分解し、1時間前のコロニーが受信し、プログラムを解凍し制御装置のプログラムを書き換える。1時間前のコロニーは救助艇とのドッキングは不可能になる。

「エミリー、プログラムにちょっとでもエラーがあれば、過去は変えられないのよ」
電脳化したエミリーにとって機械制御のプログラムを作ることは簡単である。
「わかっているわよ。プログラムの内容を確認したわ。大丈夫だわ」
「あとはプログラムを極限的に圧縮して、それを各チャンネルに分解してミニブラックホールに送信する。1時間前の量子加速衛星から私たちのコロニーへプログラムが送られる。過去が変われば、今の私たちの記憶がなくなるかもしれない」
「と言うことは、成功しても失敗しても、私たちは人を殺したという罪悪感を感じないのね。都合が良い殺人だわ」
エミリーは素早くキーボードを打ち込んだ。

 ナオミは反論した。
「いいえ!殺人じゃないわ。自己防衛、救命艇を宇宙のゴミにするのは不可抗力なの。総督の命令なの。このコロニーと総督を救うことになるのよ。多くの命が救われるし、王国が建国されなければ、そのまま幸せな生活が続けられるのよ」
エミリーはエンターキーを押した。

 その時、エミリーとナオミの記憶は消え、1時間前のコロニーのドッキングポートは救命艇との連結を拒否し、救命艇は逆噴射して宇宙の彼方へ行った。