宇宙列車 私の夏休み
徐々に身体が軽く感じる
放射線防御服を着ると、よろいを着ているように重い。でも、列車はどんどん上昇する。そうすると地球の重力も次第に弱くなる。放射線防御服も意識しないで過ごせるようになり、そして、私たちは客室の外に出られるようになった。
「ねえ、まだ重力があるわ。でも、徐々にものが落ちる速度が遅くなる」
「そうね・・・、通路を見てみない」
私たちは通路を見た。最初に見た時と同じ印象で、とても高いところに私たちの客室があるのを実感した。
「じゃあ、外に出るわ」
「重力が弱すぎて動きにくい」
「ちょっとでも足に力を入れると天上にぶつかる」
「静止衛星都市に到着すると、丁度、地球の重力と遠心力が中和する地点になるから、無重力になるわ」
「静止衛星都市では無重力を利用した新素材製造工場があるわ」
「そちらへ見学するわ。でも、担任の南先生と相談しないと」
「そうだね」
透明な放射線防御服は、有機ELディスプレイで囲まれているので、服の色も自由に変えられるし、モニターにもなる。放射線防御服から南先生の声が聞こえた。
「みなさん、左腕を見てください。私の顔が見えますね。通路は自由に通って良いです。それでは、直に会ってお互いに話し合ってください」
私たちは、通路にでて開放感を感じた。ゆっくり落ちるが、着地するときは、慣性があるので自分の足の骨を痛めないように十分注意する必要がある。
「おもしろい。ゆっくり落ちる」
「あぶない!私の体重と放射線防御服の慣性でハシゴがつかめないわ」
「南先生!どうしますか?」
「その時を考えて、この列車を運用しているのです。落下直前に、自動的にジェット噴射で落ちる速度を落とします。着地する時に、エアバックで衝撃を和らげますので、落下している時、ハシゴを掴まないでください」
「ねえ、慣性があるからハシゴをさわらないで!指の骨を折るから」
下から物凄い勢いの風が吹き出した。私たちの身体も上昇しそうだった。
「きゃっ」
下に落下直前にエアバックが膨らんだ。
「低重力状態もおもしろいわ。でも、徐々に重力がなくなる」
「そうね。放射線防御服のモニターで外の景色見ない」
「うん」
「地球がこんなに小さく見える」
「でも、はるか上に静止軌道衛星都市があるのね。まだ全然見えない」
「そうよね」
作品名:宇宙列車 私の夏休み 作家名:ぽめ