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その穴の奥、鏡の向こうに・穴編

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「羊元ッ!」
 名前を呼ぶと、周りにいた兵士たちが静止画のように止まる。え?俺なんか変なことした?柳崎も、振りかぶった本を下してるし・・・。
 戦闘の中紛れ込んでおいて、おどおどと情けなく動いていると、羊元も編み棒を下した。何が起きたんだ?
「何だい?」
「・・・なんで止まったの?」
「あんた、契約を持ちかけるんじゃないのかい」
「いや、そうなんだけど・・・」言いながら周囲を見る。この世界においての契約の威力は理解したはずだった。だが、まだ過小評価していたらしい。戦闘だろうと何だろうと、契約締結の邪魔をしてはいけないようだ。まさかここまで威力があるとは。安全でいいけどね。
 俺は羊元の前まで行くと、自分の考えをぶつけてみた。
「助けるから、武器をくれ」
 ・・・脅迫みたいだ。もうちょっときちんと本を読んでおけばよかったと後悔。もう高校生なんだよ、俺。
 当然かと思うけど、羊元は眉間にしわを寄せた。被害妄想かもしれないけど、「何言ってんだ、こいつ」って言われてる気がする。メンタル面意外と弱いんだよ?俺ってやつはさ。
「なるほどねぇ」
 しばらく考えた羊元がこぼしたのは、それだった。かかった時間は、俺の言った言葉を理解する時間だったのか。そこまで如実に表現しなくでもいいじゃないかっ!
 ひそかにいじけていると、羊元が手に持っていた袋を投げつけてきた。まあ、武器が入ってるわけだから予測は出来たけど、まあまあ硬くて痛い。