その穴の奥、鏡の向こうに・穴編
巨大な青が広がっていた。あまりにきれいな空色だったから、一瞬海かと思った。しかし途中で気付く。海じゃない。波打っているのは葉っぱだ。緑色が生い茂っているのが普通の時期だが、木々に付いているのはみな綺麗な水色の葉だった。
あまりにも異様な光景に目を丸くしたが、そこでもう一つ思い出す。
――あれ?今眼下に森が広がってないか?
俺は今落ちている真っ最中で、目の前に森が広がっている。下向きの俺の目の前と言えば、つまりは落下地点ということだ。俺は思わず身を丸めて、痛みを覚悟する。
がさがさがさっ!
予想を上回る痛みが全身を駆け巡る。幸い葉が生い茂っていたため、血が出るほどの怪我はなかった。しかしそれでも痛いものは痛い。しかも多少しか減速していないような状態で、そのまま地面にたたきつけられる。
ドサッ
はずだった。
作品名:その穴の奥、鏡の向こうに・穴編 作家名:神田 諷