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その穴の奥、鏡の向こうに・穴編

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 どのくらい進んだのだろうか?徐々に雑草も減ってきて楽にはなったが、いかんせん光がなくて、手をついて進んでいる状態だった。暗所恐怖症じゃないけれど、ここまで真っ暗な空間には耐性がなくて不安になる。足元もなんだかぬかるんできて、ねっとりと湿気を含んだ空気が俺に絡みついてくる。落としてはいけないと、早々に懐中時計をポケットに突っこんだのは正解だった。
 ふと、違和感を抱く。初めは何に違和感を抱いたのか、自分でもわからなかった。手で触れていた土壁に意識がうつったとき、正体がはっきりした。
――木の根がないんだ。
 あれだけ巨大な木だ。地下にこう空間があっても可笑しいことはないかもしれない。でも、触れている土壁にもそれらしきものはなく、頭の位置だって一度も変えていない。こんな浅いところであんな立派な神木の根が途絶えているとは思えない。それに一度も曲がっていないのも妙だ。木の下を出てしまえばこの空間が続いているわけがわからない。
 あと五分。あと五分歩いて彼女に会えなかったら、無駄足になってもいい、さっさとそのへんの交番にでも届けて帰ろう。そう思って歩を踏み出したその時、俺の足が滑った。こんなにぬかるんでいるんだから仕方がないことだ。しかし。
 どうやら、滑ったわけではなかったらしい。
「な・・・っ!」
 俺の重心が前に移り、そのまままっさかさまに落ちていく。思っていたよりもずっと深くて、真っ暗なせいで終わりも見えない。俺は死を覚悟した。だってそうだろ?たとえ落ちて死ななかったとしても、こんな深い穴に落ちちゃ、自力で上がることは不可能だ。しかもこんな辺境地、きっと来てくれないに違いない。
 そんな俺の背後から光があふれてきた。まぶしさと落ちていく風圧に耐えながらも、俺は向きを変える。するとそこには。