その穴の奥、鏡の向こうに・穴編
頭を抱えて悩む俺を見て、鷲尾が満足げに笑った。
「ほらな。やっぱり、アリスの言う『武器』とおれ達の言う『武器』は違うんだよ」
自分の考えが間違っているとはっきりと断言されて、不安にならないほど俺は自分を確立できてない。何とかして自分が間違っていないと思いたくて、必死に確認を取る。
「武器って、攻撃に使うもんじゃねぇの?」
無情にも、返ってきた言葉は違った。
「違うよ」
久々にここまで落ち込んだ。がっかりと首を落とし、孤独が包みこんでくる。そんな俺の肩を軽く叩いた。心に響かない慰めの言葉を受けてから、違いを語られる。
「ここでの武器ってのは、攻撃に使えなくてもいいんだよ。ただ、能力を発動させるためのものだから」
もちろん宝亀や鍵守、メイド服達のように攻撃にも使える「武器」もある。ただ言われればどれも、「武器」のように使われていたが、目に見て解る武器ではなかった。きっと杖のように使っていれば杖だったのだろうし、持っているだけでは仕事上必要な「道具」なのだと考えただろう。
そこでもう一度鷲尾を見た。攻撃に使わなくてもいいということは、彼の持っているもので、違和感を抱くものを探ってみればいい。
しかしそうなると、今度は別の問題が浮上した。
鷲尾の服装が、俺の理解を越えていたのだ。巨大なリボンを、ゆったりとだがプレゼント包装のように肩から腰まで斜め掛けにしてるのも、タンクトップの上から着ている肩のガッツリ開いた服も、どこぞのアイドルグループみたいに腰に巻いている布も、首にある繋がれていたときから気になっていた首輪も、耳に付けているピアスでさえ、全て俺には違和感だった。パンクっていうんだろうなとは思うけど、俺はパンクが何なのか解ってない。だから、どれがパンクから外れているのか解らないんだ。だから、人間として違和感を抱いたものをあげてみることにした。
作品名:その穴の奥、鏡の向こうに・穴編 作家名:神田 諷