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その穴の奥、鏡の向こうに・穴編

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「・・・首輪?」
 俺のイメージでは首輪はペットのするものだ。いや、もちろん人間で首輪に似たチョーカーをつけるのは知ってるけど、鷲尾のは俺の抱くチョーカーのイメージとかけ離れてる。本当に、大型犬の首輪じゃないの?って思うくらい、ナチュラルに「首輪」なんだ。
 しかしどうやらその話は終わったものとされていたようで、二人に目を丸くされた。それから、鷲尾が首輪を触りながら答える。
「残念。俺の武器はこっち」
 そう言って鷲尾が首輪からだらりとぶら下がっていた鎖を持ち上げた。そう言えば、それにはすでに一度、違和感を抱いたじゃないか。繋がれてるときに、鎖のど真ん中に鍵があったから、不思議に思ったんだ。
 でも待てよ?本来の金の話は一切解決していないじゃないか。
 それを尋ね直すと、宝亀は「むぅ・・・」とこもった声で唸った。ごめん、俺が馬鹿すぎるから、説明しにくいんだよな、きっと。
「金の概念がつかめないうちに説明するのも難なのだが、羊元は物々交換が主流だ」
 交換できるものなんて持ってません。俺が持っているのは、学校帰りの鞄とその中身だけです。交換したら、地味にこの後困ります。ま、帰れたらの話だけど。あー…、自分で言ってて悲しくなってくるよなぁ。
 勝手に思考回路を巡らせる俺の相手をするわけもなく、鷲尾が伸びをした。宝亀も遠くに目を向ける。