その穴の奥、鏡の向こうに・穴編
「アリス、宝亀の武器は何だと思う?」
その質問に、俺は宝亀を観察する。といっても女性の体をじろじろと見るのは気が引けた。そのため、ちょっと見ては視線を逸らすという、やった後「痴漢みたいじゃね?」と落ち込むような見方になってしまう。
宝亀が着ているのは、そのものと言わずとも軍服だ。背中に巨大な盾を背負い、腰にはフェンシングのほど細くはないけど、まあまあ細みの剣をさしている。となれば、俺の思う武器は・・・
「剣」
「ハズレ」とすぐに返されたので、
「なら、盾か?」というと、鷲尾は目を丸くした。当たったらしい。すこし考えてから、鷲尾はまた聞いてきた。
「鍵守の武器は何だと思う?」
それはもうあの一回で嫌なほど印象に残った。顔をしかめて答える。
「鍵だろう」
俺の思う武器のイメージにはないけど、あの使い方はまぎれもなく武器だ。たしかゲームとかでも、そういうのがあった気がする。だから、違和感と言われるとあまりない。
「当たるなぁ。川澄のは見た?宇尾は?」
少し古い名前だったので思いだせないが、俺がほかに見たのは、公爵夫人宅のメイド服と燕尾服だ。合っていると信じ込んで返す。
「どっちがどっちかわかんねぇけど、メイド服なら巨大なスプーンだろうし、燕尾服ならフォークじゃないか?」
おそろいの巨大な食事道具なのだから、燕尾服もあのフォークをメイド服同様に扱うのだろう、というのが、俺の推測だ。あの使い方は、確実の殴具の武器だよ。
思いのほかすらすら答える俺に感心しながら、鷲尾が続けて口を開いた。
作品名:その穴の奥、鏡の向こうに・穴編 作家名:神田 諷