その穴の奥、鏡の向こうに・穴編
「武器については、説明がまだだったか」
じろりと鷲尾を睨みつけ、宝亀が返してくれた言葉はこれだった。いちいちそうやって、鷲尾を責めてやるなよ。カカア天下ってやつか?この二人は夫婦じゃないみたいだけど。
それにしても、武器とはまた物騒な話だ。戦争が起こっている、というのは情報としてはあるものの、俺自身が武器をふるうことになるとは。虫も殺せないとは言わないけど、ネズミとかはもう殺せないような俺が、人と戦うことができるのだろうか?男のくせに、ワルが出てくるような漫画も読めないんだけど。
「武器とは・・・」という宝亀の言葉で、我に返る。
「武器とは、能力を使うときに必要なものだ」
「・・・俺の能力って、そんな攻撃的なものなわけ?」
「いや、むしろ無力的、というべきかもしれないな」
それもそれでちょっとがっかり。無力的って・・・
落ち込む俺を見て、鷲尾がふと気付いた。
「アリスの思う武器って、俺らとちょい違うんじゃね?」
何故いきなり「攻撃的な能力を持っている」と俺が思ったのか、不思議がっていた宝亀はその言葉にハッとした。え?武器の使い方が違う?
混乱する俺を見て確信をもった宝亀が、即座に解説してくれた。すぐに説明できるってすごいな。
「能力は武器を持っていれば発動できるものであり、武器がなければ能力が使えないものなのだ」
要は、能力を使う媒体ってところ?でもやっぱりそれって、こう、剣とかじゃなくても、杖みたいなものなんじゃないの?
説明を聞いてもまだ解らない俺に、さすがの彼女も頭を悩ませた。これ以上説明しようがないようだ。そこで、鷲尾が口を開いた。
作品名:その穴の奥、鏡の向こうに・穴編 作家名:神田 諷