その穴の奥、鏡の向こうに・穴編
あきらめた俺は、奥であくびをしている鷲尾の方に歩いていく。
「お疲れ」と労いの言葉をくれた彼に、結構な形相で尋ねる。
「なぁ、どうやって許可証ってもらうの?」
「さぁ?でも、王族が発行してるってことは知ってるけど」
どうやらもう一度、宝亀に聞く必要がありそうだ。っていうか王族って、謁見とか何とかすげぇ難しそうなんだけど、俺帰れるんだよね?
悶々とする俺越しに、鷲尾が鍵守に聞いた。
「お前、どっち派だっけ?」
そうだ。確かにそんな派閥があった。何色と何色だっけ?白と黒?赤と青?緑と黄色?
「どっちでもない。赤だろうと白だろうと、許可証があれば通すわ」
赤と白だった。結構めでたい色合わせ。
その答えを聞くと、鷲尾は「宝亀に相談すっか」といって、折り返し始めた。後ろ髪も何もないからいまいちよくわかんないけど、「後ろ髪を引かれる気持ち」で俺もその場を後にした。
作品名:その穴の奥、鏡の向こうに・穴編 作家名:神田 諷