その穴の奥、鏡の向こうに・穴編
「一人で行って、恩人を見殺すのは心地よくなかろう?」
え?そんなに危険な道のりなの?
「わぁったよ!行くって、行きますって!」
鷲尾はずんずんと歩いてくると、途中で俺の襟首をつかんで、ずるずると引きずって行った。途中で振り返り、
「すぐ戻ってきてやるかんな!」と鷲尾が声を上げると、
「ああ、報告を待っていよう」と楽しげに宝亀が答えた。ねぇ、この二人、本当に恋人予備軍とかでもないわけ?
恋人予備軍すらできたことのない俺は、十分にひがんでから、鷲尾の腕を振り払った。
作品名:その穴の奥、鏡の向こうに・穴編 作家名:神田 諷