その穴の奥、鏡の向こうに・穴編
といっても、今度は多すぎて困る。片っ端から挙げていくつもりではいるけども、日本だけの事でもいいものかというのもある。でもまあ、俺が日本人である限り仕方ない話か、そこは。
「あ」とそこで思い出す。あったじゃん、世界常識。
「色が違うってのに、一番驚いたかも」
二人がぽかんとした。うん、まあ、そうなりますよね。俺も自分の説明下手に涙が出てくるよ。
さっきの鷲尾みたいに、自分が少し挙動不審になっているのが解る。
「いや、あのさ、空とか木とか・・・そう言うのの色?それが違うんだよ」
解りにくっ!解りにくいよ、俺!
自分の馬鹿さが露見して、つい泣きそうになった。情けなさが俺を包みこんで、恥ずかしさが袋の口を閉じて俺を閉じ込める。
鷲尾と宝亀はふと顔を合わせると、自分たちの足元に目を向けた。それから宝亀の奥にある波打つ草原を捕える。それからまたお互いに目を合わせて、包装されて動けなくなった俺を見てきた。
俺を見るなぁ!
「・・・草は赤くないのか?」
耳をふさぎたいほどだった俺にかけられたのは、そんな疑問だった。逆に俺はぽかんとした顔で固まってしまう。いまさらだけど、俺はパニックを起こしやすい性格なのかもしれない。そう初めて自覚した。悟ってから慌てて返す。
「お、おう・・・。草の色は緑だ。葉っぱも」
「草と葉っぱが同じ色?」
「不便だな、どう区別するんだ?」
同じ色だと不便なんだ・・・、何に使うんだろ。
つい違う感想を漏らしてから、俺は頭をまた動かす。区別、くべつ、区別ぅ・・・
作品名:その穴の奥、鏡の向こうに・穴編 作家名:神田 諷