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その穴の奥、鏡の向こうに・穴編

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「有須・・・だっけ?こいつに元の世界への帰り方を教えてやってくれ」
 え?それだけ?ていうか、「アリス」って言っただけで、俺が異世界から来たとか、そういう肝心な情報はぶけんの?そんな便利な言葉だったの?
「ほうほう。今回のアリスもまた、やはり迷子なのだな」
 そうだ。それだ。
 さっき一瞬飛び去った質問を慌てて引き戻した。
「その、今回のアリスってなんなんだ?」
 俺の質問に鷲尾と宝亀はきょとんとした。それから二人が視線を合わせる。しばらくじっと見つめ合っていたが、ただ色気はなかった。原因は、宝亀の周りからたぶん怒りみたいなものが立ち上っていたせいだと思う。鷲尾は気まずさに口を固く結んでいるが、怖すぎるせいか視線がそらせないでいた。解るぞ!俺も教師とか、父親の雷を食らったときとかはそうなるし・・・。我ながら情けないけど。
 しばらく沈黙していた宝亀が、やっと視線を動かした。同時に鷲尾が解放感から息を吐く。
「通りすがりに助けてもらったにもかかわらず、そんな基礎知識すら与えていないとはな」
「いや、基礎知識ではないんじゃ・・・」と言いかけたが、宝亀に睨まれた鷲尾は口を閉じた。顔が斜め上に向いて、口笛を吹き始める。どこの曲だかわからないけど、民謡っぽい曲だ。
 宝亀は俺の方に振り返った。怒られるのではと、心当たりもないのにどきりとする。
「ならば私が鷲尾に代わって答えよう。アリスに会わせてもらったという意味では、代わって教えるのも有りだろうしな」
 いや、それだったら帰り方の方を教えてください。そう思ったけど、正直今宝亀に意見する勇気がなくて、「はい」としか言えなかった。