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その穴の奥、鏡の向こうに・穴編

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「なんか・・・寝れそうにないな」
 久々に返事をしたもんだから、鷲尾のテンションが上がったようだ。笑いながら、わざわざ俺のところまで戻ってくる。
「いろんなものの色が違うと、やっぱ落ちつかねぇよな」
「それもあるし、正直戦争中ってのもあるな」
 また戦いネタを持ち出したことによって、鷲尾が少し気まずそうにした。しまったとは思ったものの、本心なので訂正しづらい。
 しかしそこはさすが年上。鷲尾はすぐにとりなおして、空を指差した。
「大丈夫、夜は休戦だから」
「・・・休戦?」
「そ。赤が夜は寝たいって言って、白に契約を持ちだしたんだよ」
 どうやら赤は健康に気を遣う人が指揮を取っているようだ。そしてそんな契約に乗った白もどうなんだよ。なんかホントにこの世界はよくわからない。
 考え込む俺の頭を、鷲尾がぐりぐりとなでまわしてくる。こいつのこの子供扱い、なんなんだろうな?俺ももう高校生なんだけど!
「ま、とりあえず寝とけ。あいつも夜は動かないから、明日の朝のうちに見つかるって」
 部活もやってない、バイトもやっていないという俺は、年上と会話することに慣れていない。それでも「兄貴がうざい」とか、「兄貴が面倒くさい」とか言ってた浜谷の気持ちが何となくわかった。こんなことなら、あいつに対処法を聞いとくべきだったな。実際に聞いてる時は、そんな話をしてくるお前がうざいとか、酷いこと思ってたけど。
 なにはともあれ、運動慣れしていない俺の体は疲れ切っていた。都合がいいとは思うけど、ここも鷲尾を信用しよう。体内時計のせいか、とにかく眠いには違いないし。そう思って、俺は眠りについた。