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その穴の奥、鏡の向こうに・穴編

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「おお!間違いない、これだよ、これ!」
 テンションが上がるあまり、彼は鍵を黄色の天に掲げて、その場でくるくると回った。古ぼけた巨大な鍵が、自由の象徴なのだから仕方ないか。
 鷲尾は近くに鍵を突き刺し、鎖を手繰り寄せる。地面にだらだらとのびていた鎖がまっすぐになり、鷲尾の手元に蝶番が届いた。
 俺はその間、何もすることがなくて近くに座り込んでいた。ないとは思うけど、こいつの話した「提供」だの何だのの話が嘘かもしれない。もしそうなら、こいつは鎖から解放されたとたんに逃げるんだろう。そんな事態、あってはならない。自分の疑い深さを思い知るが、まあ警戒心が強いのはやむを得ない。っていうか、現状に至っては褒められるべきところだろう。
 鍵穴と格闘する鷲尾を見ながら、俺は一つの事を思い出す。
「そう言えば、お前の友達って、亀まがいっていうのか?」

 ガシャーン

「いった!」
 別に何処にも行ってない。蝶番を足の上に落とした鷲尾の口から、ただ洩れた言葉だ。痛いってことでいいんだと思う。
 鷲尾は自分の足を押さえながら、俺の方を見てきた。
「なんで知ってるんだ?」
「メイド服と燕尾服が話してるのを聞いた」
 結構普通に言ったつもりだったのだけれど、鷲尾の目が面白いぐらい見開かれた。口もあんぐりと開かれる。