その穴の奥、鏡の向こうに・穴編
「よくある恋愛ドラマですよ」
この世界にも恋愛ドラマとかあるんだと思ったけどそこは突っ込まないでおこう。この世界になくても何故かこいつは知ってそうな気がしてならないし・・・
が、ここにも問題がある。恋愛ドラマとか、俺はあまり見たことがない。見るドラマは刑事ものか企業ものが大半で、恋愛物なんて母親がチラ見しているのを横目で見た記憶が何となくある気がするくらいだ。
「つまり?」と続きを促すと、打海はにやりとまた笑う。
「車掌の能力と言うのは便利なものでしてね。双方喉から手が出るほど欲しがったんですよ」
意味が解らない。ぽかんとした俺を置いて打海は続ける。
「しかしながら、車掌は赤の王と幼馴染でしてね。仲が良かったんです。まあ、そのせいで赤の女王が嫌いだったんですがね」
は?幼馴染だからって何で赤の女王が嫌いになるんだよ?本気で解らないぞ・・・?
眉間にしわを寄せると、その表情を見て打海が少し困ったように首をかしげた。が、補足をすることなく話を続ける。
「とにかく車掌としては白に仕えて赤と対立もしたくないし、だからと言って赤の女王の下に付くのも嫌がったわけです」
・・・まあ、嫌いな奴の下には付きたくないよな。
「そこで、赤の王が足しげく説得に通ったんですよ」
「・・・なんでだ?」
「昔馴染みに好で仕えてくれってことです」
そんな無茶な。けれども今考えればそれが通ったってことか?
けれども真相は違うらしい。
作品名:その穴の奥、鏡の向こうに・穴編 作家名:神田 諷