その穴の奥、鏡の向こうに・穴編
「車掌はな、赤の王族には仕えてねぇのさ」
「は?」
意味が解らない。だって赤の軍の能力者なんだろ?だったら服部やら雪坂となんら変わらないじゃないか。彼らはみんな、赤の王族に仕えていたから「赤の軍」だったんだろ?
ぐるぐると混乱していると、脇から打海がけらけらと笑った。
「その言葉は解りにくいって、グリフォン」
「あ、そうか?んじゃえーっと・・・」
悩みだした鷲尾をよそに、打海が俺の方を向いて説明し始める。
「えっとですね。つまり、車掌は赤の女王には仕えてないんですよ」
「えーっと・・・」
まだ解らん。これは俺が馬鹿なのか?こいつらの説明が下手なのか?前者を否定しきれないから、後者だと言いきれないのが悲しい。
打海は「失礼失礼、解りにくかったですね」とすぐに謝罪をすると、元々考えていたのか、立て続けに説明をする。
「赤の王にしか仕えてないって言ったら解ります?」
「まず、前提として王族のどちらかに仕える、なんてことは出来るものなのか?」
そこからかと言う顔をされた気がする。そこからだよ。俺の住む日本は王政じゃないんだ。
作品名:その穴の奥、鏡の向こうに・穴編 作家名:神田 諷