その穴の奥、鏡の向こうに・穴編
「やったぁ!で、できたぁ・・・ッ!!」
声を聞いて振り向くと、藤堂が鷲尾のと同じような羽根を持っていた。それを根角に見せつける。
「ほらっほらっ!出来たよ!」
「ボクじゃなくてアリスに渡せ」
せめて一言褒めてやればいいものを、根角はどうしてああなのだろうか・・・
ぶすっとふくれっ面になった藤堂が、ずかずかと俺の方に歩いてきた。そして羽をグイと押し付けてくる。
「はい」
「お、おう・・・」
藤堂から受け取った羽根は鷲尾の羽根の二分の一程度のサイズだった。一番広い部分の幅は一緒なので、おそらく能力が未熟だとか、そういうものではないかと思われる。ドードーは飛べない鳥だと聞いたことがあるが、それは確かに目が粗く、ぼさぼさしていた。とてもじゃないが、飛ぶための羽根ではない。薄黒い色と相成っては小汚い印象すら覚えた。
折れないように慎重に羽根を仕舞いながら、聞いていなかった藤堂の能力を尋ねた。
「ドードーはね、相手の能力を反射できるのよ」
ん?それ最強なんじゃね?
ついそう思ったが、先読みした根角がため息をつく。
「武器を持っている間はミラーの能力は一切効かないのさ。たとえそれが身を守るためにチェシャ猫の力を借りて姿を消すためだったとしてもね」
武器を手放せば・・・と言いかけてやめた。いつ必要になるか解らなければ、元の場所に戻れるかも解らない。そんな状況で武器を手放すのは、普通に考えて危険じゃないか。この戦争で能力者だろうと能力を使えないことは必ず不利になる。
「ワンダーの能力も反射できないし、君の無効化と違って反射だから、身代わりとなるものが周りにいないと効果を発揮しない」
意外と限定されているようだ。ってか、藤堂がいつも根角の周りをうろついているとなれば、いつも身代わりをやらされてるのかよ・・・。なんか一気に根角の苦労が解った気がした。
作品名:その穴の奥、鏡の向こうに・穴編 作家名:神田 諷