その穴の奥、鏡の向こうに・穴編
「じゃあ、いくよ」
ぽんっ
「「・・・え?」」
ちょっと待てよ?そんな簡単なのか?もっとこう力を入れてじわじわと塊ができていくみたいな、そんな漫画的な展開じゃねぇの?効果音「ぽんっ」とか何かの間違いだよな??
俺と同じ考えだった藤堂が、根角に問い詰める。
「そ、そんなもんなの?だって能力の結晶を作るんでしょ?」
が。
「作るのにいちいちそんなに力んでたら、面倒くさいし疲れるじゃないか」
「いやそうだけどそうじゃねぇだろ!」
「鷲尾や宝亀はもっと早く作れるんじゃないの?」
「まじか?!」
バッと振り返ると、名前を上げられた二人が手品のように、何もなかった手にさらっと見覚えのあるものを作り出した。え、アレ作ってたの?ってか片手で作ってるってことだよな?どんだけ化け物なんだよ・・・ッ!!
「まあ、俺らは一緒に行動してなくてもワンセット扱いが多いからなぁ」
「そうだな。お互い何かあった時は『出来れば』助けるという協定があったからな」
出来ればなのか・・・。だから初めてこっちに来た時に掴まっていた鷲尾を宝亀は助けなかったんだな。本当にできなかったのかは不明だけど。
出来たてほやほやの「根角の髭」を俺に渡すと、根角は藤堂の方を見た。
「何してんの?早く作りなよ」
「わっかるかぁ!!」
当然の咆哮。それなのに根角は眉間にしわを寄せて、口をとがらせる。
「うるさいなぁ」
「見ればわかるでしょって早すぎて解らないのよ!説明!説明プリーズ!」
「能力を込めろ」
「格闘技かっ!」
いきなり漫才を始めた二人に呆れながら、鷲尾と宝亀も作ったそれを俺にくれた。鷲尾のはまだ余ってるからいいんだけど・・・。
作品名:その穴の奥、鏡の向こうに・穴編 作家名:神田 諷