その穴の奥、鏡の向こうに・穴編
「落ち着けよ、宝亀。アリスが怯えてんぞ」
お、怯えてねぇよ!断じて怯えてなんかねぇぞ!必死な女子に怯むほど弱くもないはずだ!まあ、ちょっと怖いと思ったが・・・。ってか鷲尾もこの状況を見て笑ってんじゃねぇよ!!
答えが解らなかったので、もう一人の博識に視線を向ける。が、彼は対して取り乱しもせずに淡々と答えた。
「勘違いするでない。私の能力は『知っている』のではなく『解る』というだけだ」
「・・・つまり?」
「知らんと言うことじゃ」
謎すぎるな連絡手段。
じゃあどうしようかと考えていると、若杉がまた勢いよくソファに座った。どかっと派手な音がする。若杉はスタイルの良い長身であり、つまりは脚が長くケツの位置が高いわけだが、あれで勢いよく座って痛くないんだろうかと結構疑問に思う。あのソファが見た目以上にふかふかなんだろうか?
失敬、脱線してしまった。座り込んだ彼は煙管に手を伸ばすと、それを吸ってまたピンク色の絶対に身体に悪そうな煙を吐きだす。
「契約や能力を元に連絡手段をとっているとすれば、どうせ知ったところで真似も妨害もできまい。それならはなから自ら連絡手段を作る方が利口だろうて」
要は真似するのは難しいってことか。いちいち回りくどい言い方をする奴らばかりだから、なんかこの世界に来てから頭が少し良くなった気がする。少なくとも理解力は上がったはずだ。
あ。
「そういえば、お前らもなんか『アイテム』とか持ってんのか?」
「アイテムって何さ?」と怪訝な顔で根角に聞かれたので、以前もらった鷲尾の羽根を取り出した。どうやら一般的に知りられているもののようで、みんな「ああ」と言う顔をする。
「こういうさ、それぞれが持ってる秘密兵器?みたいなさ」
「兵器は無いけどね」
何処までが通じて何処からが通じないのか、それが解らないってのは勝手が悪い。そんな訂正無くたって解ってるし、俺に言わせれば攻撃系の能力はある意味で全部兵器だ。
そんな皮肉を返してきたものの、根角はすぐにポケットから何やら長い紐を取り出した。
作品名:その穴の奥、鏡の向こうに・穴編 作家名:神田 諷