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その穴の奥、鏡の向こうに・穴編

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「つまり、限定されてる方が、強い能力を持ててるってことか」
 ゲームとか、小説の設定ではとてもありがちな話だ。そんなに驚くことじゃない。ここはそれほど動揺することなく話を呑み込めた。
 けれども、それは彼らにとっては不思議だったそうだ。まあ、当然だろうな。能力自体を知らないし、契約に関してもちんぷんかんぷん。それなのにどうしてこれだけはすぐ理解できたのかは確かに疑問を抱かれてもおかしくない。
 ついしなくてもいはずなのに弁解をしてしまった。
「いや、その、漫画とかでもよくあるじゃんっ」
「・・・漫画?」
 皆がぽかんとした顔になる。もしかして、この世界って漫画とかないのか?考えてみれば、漫画家なんて職業がこんな戦場の真っただ中で成り立つとは確かに思えない。そういえば金の概念も無かったな。使える物を物々交換でって言うのが一般的だったっけ・・・。そうなると、漫画どころか小説も危うい。書物はあるみたいだけど、きっとどれも歴史の教科書に抜粋されていたような古めかしい感じの奴だけだろう。
 ・・・嫌な予感がしてきた。
「有須っ!『まんが』とはなんなんだ?お前の世界にそんなに一般的なものなのか?!」
「落ち着け、宝亀!!」
 そうだった!こいつの知識欲は半端ないんだった・・・!
 後ずさりながら手をぶんぶんと振って話題を無理やり変える。