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その穴の奥、鏡の向こうに・穴編

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「まあ、何事にも例外的はあるがのう・・・?」
「例外?」
「そうじゃ。私が告げるよりも、そこの猫目に話させた方が早いだろう」
 そういうと、まるで平安時代の貴族が扇子で口元を隠しているのと同じような感じで、若杉は紙で口元を隠した。今度は何処の女中だろうか?草子でも書くのだろうか?書きそうだな・・・
 指名された打海はにっこりと笑った。
「いやです」
 笑顔同士の睨み合いが続く。頼むから、せめてもっと怖い顔で睨み合ってくれないだろうか?本気で怖すぎる。
「なんていうか・・・大人気ねぇな」
 そういって割り込んだのは鷲尾だった。この睨み合いに割り込むとは・・・相当な勇者か馬鹿だな。馬鹿と言うか、空気が読めてねぇって言うのか・・・
 鷲尾は若杉の元で歩いていくと、彼の持っていた紙を引っこ抜いた。それを見ながら「ふぅん・・・」と呟き、そして話に戻る。
「あのさ、若杉の方が大人なんさからさ、そこは我慢しないと」
「年上が我慢しないといけないこともないし、そもそもこれは我慢ではないのう」
「じゃあ何なんだ?俺には『必要事項をアリスに教えていないチェシャ猫を責めてる』ようにしか見えないけど?」
 鷲尾は本当にたまに、的確に相手の心にグサッとくるようなことを言うからうすら怖い。頼むから若杉を怒らせるなよ・・・!!
 しかし彼は怒るどころか豪快に笑いだした。