その穴の奥、鏡の向こうに・穴編
一応今まで出た人を、紙の裏に若杉が書いていく。が、どうやら皆は名字で話していたのに、彼は役職名に変換して見せてきた。
『車掌・公爵夫人・花』
「・・・花って?」
全く意味が解らなくて聞いたのに、残りのメンツは「そいつらがいたか」と盛り上がっていた。待ってくれ、肝心の俺が付いていけてないから!役職名ってことしか解らないから!
騒ぐ五人をよそに、打海が隣に来て教えてくれた。
「『花』ってのは、三人で一つの能力を発揮する奴らのことなんですよ。百合・伊原・桟敷っていう三人組です」
「なんで、そいつらは聞きやすいんだ?」
「公爵夫人の勧めで赤に仕えたからですよ。赤がいいってんで使えたわけじゃない分、今の赤の現状に不満を持っていてもおかしくないんです」
契約は命を掛けることと同義、みたいな流れだったのに、ここに来てまたずいぶんと軽いことだ。そんな○○ちゃんが入るなら私も―、なんて女子がトイレ行くようなノリでいいのか?
ともかく道は見えた。俺は若杉の方を見る。
「ありがとう、若杉」
しかし、若杉はハトが豆鉄砲を食らったような顔になった。もっとドヤ顔をかましてくると思ったんだけど・・・
作品名:その穴の奥、鏡の向こうに・穴編 作家名:神田 諷