その穴の奥、鏡の向こうに・穴編
「で?これから俺たちは何をすればいい?」
鷲尾の一言ではっと我に返る。そうだった。帰り方を聞きたいんだった。お仲間を増やすためにここに来たわけじゃないんだよ。
若杉は再び紙を俺の前に掲示した。
「これに、赤の王族の不満を書いてこい。赤に仕えている者から聞くのだぞ?」
「そんなんで帰れるのか?」
「100%とは言えんがな。しかし白の王族、特に王の白政(あきまさ)は快楽主義者だ。自分さえ楽しければいいと言うところがある。赤の臣下から集めた赤の王族の悪口なぞ、奴の好物だろう」
まあ、会った時から薄々感じてはいたけど・・・、悪趣味だな、白の王族は・・・。しかもその悪趣味のレベルが小学生レベルじゃないか。なんか色々救われないけど大丈夫なのか、白政とやら。
けれど・・・と赤の王族を思い出す。
彼らは彼らでかなり攻撃的だった。それこそ自分達の悪口を言う臣下なんていたら、片っ端から殺しそうな勢いだったじゃないか。そんな中で、仕えてもいない謎の存在たる俺、アリスに悪口を教えてくれる奴なんているいるのか?だいたい悪口事態、ある意味気心の知れた人としかできない話な気がするんだが・・・
その考えを悟ったのか、俺に仕えてくれている六人は頭をフル回転させた。
「まあ、一番に名前が挙がるのは等々力(とどろき)だな」
「ああ、たしかにな!あいつは赤の女王の悪口ならとめどなく言ってくれる」
「それなら篠宮(しのみや)もじゃない?」
「流石根角!赤の女王に心酔してる彼女なら、きっと赤の王のことも言ってくれるわね」
「後は・・・」
そこで名前が止まってしまった。後一人足りない気がする。
作品名:その穴の奥、鏡の向こうに・穴編 作家名:神田 諷