その穴の奥、鏡の向こうに・穴編
「そうだ。しかも根角の依頼も終わらせることもできるんだぞ?なかなかの名案じゃろうて」
確かに根角の依頼も・・・って、え?根角って依頼内容言ったっけ?ってか依頼があるってこと自体一つも・・・
その場にいた若杉と宝亀以外がぽかんとした顔になる。宝亀はため息を吐くと、若杉を呆れた目で見た。
「どうせ『村の仲間のためといって動かした』というところから、解決方法を貴様に依頼すると踏んだんだろう?」
「流石亀まがいだ。賢い人間は私は好きじゃのう」
まったく、どんなところから情報が漏れるか解ったもんじゃない。それに、いちいちそんなところから推察できる能力って言うのが凄い。俺のついていけない世界だ。お前ら、IQ高過ぎ。
しかし。そうなるともうひとつ疑問点が浮かんできた。
従属していない限り、何の提供もしちゃいけねぇんじゃなかったっけ?
今、若杉は「俺に」従属した。だから、確かに俺は彼に何かをする必要はない。でも、それで根角の問題まで解決したのであれば話は別だ。だって、根角は何の提供もしていなじゃないか。無償奉仕が禁止のこの世界で、それって大丈夫なのか?
そう思っていたら案の定、若杉は勢いをつけて、ひょいと長躯を持ち上げた。
作品名:その穴の奥、鏡の向こうに・穴編 作家名:神田 諷