その穴の奥、鏡の向こうに・穴編
物知りグリム
鷲尾の案内を受けて、再び、キノコの群れの前に着いた。相変わらず毒々しい色合わせで、なんかすごい酔いそうだ。食べたら絶対毒がありそうだし、たまに「ふしゅーっ」といって噴きだされる胞子も、非常に健康に害を与えそうな香りがする。
「で、これからどうするんだ?」
「根角についていくだけだ」
やっぱり鷲尾の時と同じなのか。根角は胞子など気にせず深呼吸すると、キノコの森の中に入っていった。鷲尾の能力と言い、能力を使っているのかどうかが見ただけでは解らない。契約をしたから大丈夫なんだろうけど、なんだかやっぱり不安になるなぁ。日本じゃ「契約は絶対」なんてことはないし、こういう個人的な約束レベルだと、裏切りも実在するし・・・
根角に続いて、藤堂がキノコの森に飛び込んだ。宝亀、鷲尾と続く。
「ほら、早く行かないと置いてかれちゃいますよ」
打海にそう言われ、ワイシャツの袖を伸ばして口元にあててから、彼らの後に続いた。
外から見ても大体わかってた。大体わかってたんだけど・・・
胞子が半端なさすぎンだろ!
ベストについた胞子を見れば、まるでスプレーを噴き付けられたかのように紫だったりピンクだったり、まさに異様だ。黄色っぽいのは普通だろうと思うけど、いやに派手に感じる。これ、洗って落ちるものだろうか・・・。少なくとも今は、花粉症持ちじゃないことを心から喜んだ。
どんっ
いきなり鷲尾が止まったので、その背中にぶつかってしまう。
「どうしたんだ?」
「おっと、わりぃ、着いたってさ」
そういって彼がどくと、そこには周りのキノコより少し立派と言うサイズのキノコがにょっきりと生えていた。
えーっと?俺の記憶が正しければ、「家」って言ってなかったか?これはどう見てもキノコでは・・・
尋ねようとすると、言わせるものかと根角が先手を打ってきた。
作品名:その穴の奥、鏡の向こうに・穴編 作家名:神田 諷