その穴の奥、鏡の向こうに・穴編
「しかしこの場所は、獅子丸がいなくとも、誰もが知っているぞ?」
「・・・だったら何?」
「赤や白が来たら、どうなるのだろうな?」
考えてみれば、確かにグリムは赤も白も欲しがりそうな存在だ。宝亀のことも欲していたのだから、間違いないだろう。そして宝亀を捕まえるために鷲尾を探していたのなら、今の俺たちと同様に、グリムを見つけるために根角を狙いに来てもおかしくない。
そして両方と会ったから解る。赤も白も、普通じゃない。家なんてきっとぶっ壊してでも根角を探しに来るだろう。
「いいんだよ。みんな、ボクをかばうために存在してるんだ」
・・・ん?今こいつ、何て言った?
聞き返す間もなく、宝亀が言葉を続けた。
「獅子丸が従属した。そしてこの私も、同じ者に従属することを決めた」
「・・・まさか」
「この意味が、解るな?」
解りません。本気で解りません。でも根角が解ってしまったようで、聞き返してくれない。根角に言っているのに俺が尋ねるのもなんか変な気がして、これ以上尋ねることもできない。さっきのも聞きたいし、今のも聞きたいし、なんだこのストレスのたまる環境は・・・
根角が口を開きかけたタイミングに合わせて、張りのある声が割り込んできた。
「待って!!」
声の主は藤堂だった。よくあの会話に割り込む勇気があったなと、つい尊敬してしまう。藤堂は根角を後ろから抱きしめると、そのまま宝亀をにらんだ。なんだかんだいって、こいつらもただのリア充かよ。
「説明して」
「いらない」
「あたし解んないもん!」
でかしたよく言った!俺も解らないから説明がほしいです。
俺の心の声も届いたのか、宝亀はため息をついてからこう説明した。
作品名:その穴の奥、鏡の向こうに・穴編 作家名:神田 諷