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その穴の奥、鏡の向こうに・穴編

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「だって心配なんだもんしょうがないじゃん!」
「君が来なければボクの居場所もばれないし、安全なんだよ!」
「一軒ずつ回られるかもしれないでしょ!」
「そんなこまめなことする輩いないでしょ!それにもしあったとしても、他の家を回ってる間に逃げるよ!」
「嘘だ!忠哉がそんなことできるわけないでしょ!」
「お前にボクの何が解るって言うのさ!」
 声を聞けば、確かに藤堂が女だと言うことは解った。けども、この惨状は一体何だ?忠哉と呼ばれているのは俺と同い年くらいの少年で、くすんだ茶色の、少し長めの髪が特徴的だった。声は少し女っぽく、初めは藤堂と忠哉、どっちがしゃべっているのか解らなかった。まあ、忠哉というからには、今回は男で間違いはないだろう。
 怒鳴り合っているせいで二人とも顔が真っ赤になっている。が、不意に藤堂が耳をつんざく大声で叫んだ。
「それに・・・あたし以外の人が先に来るのは嫌なのよ!!」
 え・・・、これは軽く告白なんじゃないか?俺たちものすごくお邪魔虫じゃ・・・
 しかし忠哉は眉間のしわが数本増えるくらい、顔を極端にしかめた。
「何なのそのプライド!ボクのお目付役にでもなったつもり?」
 砕いた、思いっきり砕いた。女の子の精一杯の告白を一蹴したぞこいつ。モテない男子に恨まれるフラグ入ったぞ、俺も含まれてるけど「モテない男子」に。
 泣きそうな顔でふるふると震える藤堂と、それを不快そうに見る忠哉の間に、こういうときは全く空気を読まない宝亀が割り込んだ。