その穴の奥、鏡の向こうに・穴編
「そ・・・そっか」
そう考えると、宝亀が怒った理由も解る。戦えないくせに狙われている俺が敵を呼び寄せるなんて、確かに我慢ならないな。
けれども、だからと言ってグリムに会うのを諦めるわけにはいかない。彼だか彼女だか知らないけど、ともかく俺が帰るためには必要なんだろ?とにかく帰りたいんだよ!元の世界が恋しいとか、家族に会いたいとか、そんな可愛らしい理由じゃないけど、結構一刻を争うだろう?!
振り返って宝亀を見る。
「なあ、どうすればいいんだよ?やっぱり無理なのか?」
「・・・一つだけ、手がないわけではない」
宝亀のその言葉に、鷲尾がぎょっとし、打海までが信じられないと言う顔で彼女を見ていた。ん?そんなに変な手なのか?
二人の反応に不安を覚えていると、宝亀が話を続ける。
「ネズミに頼みに行くんだ」
「・・・ネズミ?」
ネズミってあのネズミだよな?何でネズミが解決策を持ってるんだ?能力者の名称だとしても、鷲尾でつきとめられないグリムの所在地を、どうやって解ると言うのだろうか。
それを尋ねると、宝亀はくるりと向きを変えた。
「説明は追ってする。先に情報を持っていかないと、ネズミにも会えないからな」
先に情報を持っていく?どういう意味だ?その意味も解らないまま、俺達は宝亀に続いて歩き出した。
作品名:その穴の奥、鏡の向こうに・穴編 作家名:神田 諷