その穴の奥、鏡の向こうに・穴編
「一人だけ、状況を打開する案を出せるかもしれないやつがいる」
「宝亀ですら出ないのにか?」
「私のは記憶で情報だ。状況から応用して思考する技術に長けているわけではない」
解らん。言葉が難しくて解らん。要は知識があるだけで応用が出来ないってことか?
「そういう能力を持つ存在も、ここにはいるんだよ」
聞き逃したのでともかくそういうことにしておこう。・・・って、え?
「いるのか?」
「いるにはいる」
気になる言い方だ。自覚があるのか、宝亀は珍しく困った様子を露わにした。
「ただ・・・」
「ただ?」
「酷く・・・変わり者でな・・・」
自分たちを差し置いて言ってるのか?お前らだってかなり変わりもんだぞ?黙って聞いていた打海が、大げさにため息をついた。
「グリムのところに相談に行くなんて、無謀じゃない?」
「・・・だろうな。私もそう思う」
そんな・・・
「が、今回は稀なケースだ。奴の食指も動くかもしれん」
つまり、気分が向かないと動かないタイプってことか。確かに面倒は面倒かもしれない。・・・あれ?
作品名:その穴の奥、鏡の向こうに・穴編 作家名:神田 諷