その穴の奥、鏡の向こうに・穴編
「獅子丸、何をしてる」
「いやぁ!アリスに会うのが久々なもんだからさ!つい興奮しちゃって」
「お前今その姿でそれ言うのやめろ!!!」
本気で背筋がぞっとしたじゃねぇか!打海が隣でけらけらと笑う。笑い事じゃない、こっちはマジで気持ち悪かったんだよ!
すると、宝亀は次に打海をにらんだ。
「お前が早く服を渡さないからだろう」
「いやぁ、ごめんね。ご婦人がいるところで」
途端に、彼の手に荷物が現れる。どうやら彼が消せるのは生き物に限らないらしい。良く見ればそれは袋ではなく、鷲尾の服そのものだった。上服に他の服を詰め込んで、上を飾りで付けていたリボンで結んである。
木陰に鷲尾を突っ込み、それから着替えを放り投げる。ごそごそと草むらが動いて、数分もしないうちに鷲尾が出てきた。一応下だけ履いたらしい。まあ、良しとしよう。
作品名:その穴の奥、鏡の向こうに・穴編 作家名:神田 諷