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その穴の奥、鏡の向こうに・穴編

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「アリス、貴殿に伝言がある」
「で、伝言・・・?」
「王からだ」というと、そのまま下降を始める。そりゃそうだ。空は飛べないだろう。俺はとっさに手を伸ばして、彼の腕を掴んでしまった。打海と宝亀がぎょっとする。掴まれた雉野も驚いていた。
「主?!なにしてるんですか!」
「有須、放せ!そいつは害悪だ!」
 酷い言われようだ。でも、俺は伝言ってのが気になる。それを聞くまで、放すつもりはなかった。いや、重たさでもうすでに手が滑り落ちそうなんだけどさ。
 雉野がふと笑う。女子ならときめくようなスマイルだろうが、残念ながら俺は男だ。訝しむか、「まずった」と後悔するしか選択肢がない。
 しかし、どちらも間違いだった。彼は口を開いて俺に言う。
「今回はこちらの負けだ。貴殿は逃げると良い。また会えるのを楽しみにしている。そう仰せつかった」
 おもむろに彼は俺の腕をぐるりと回した。もともと落ちそうだったわけだから、それだけですぐに手が離れてしまう。この高さから人が落ちて助かるとは思えない。
「雉野!」
 とっさに名前を叫んだが、落ちていく彼は止まらない。死ぬ、と思ったその時、彼は身をくるりと回転させ、足から見事に着地した。まあ、地面は盛大な音を立ててえぐれてたけど、まあそれは良しとする。
「さあ、行くぞ」
 宝亀がそう言うと、鷲尾が大きく羽根を動かした。