その穴の奥、鏡の向こうに・穴編
「だからさ、赤の手に渡らないよう、君は閉じ込めたおかないとね」
・・・は?
「ねぇ、六花?そう思うよね?」
「ええ、白政(あきまさ)が言うのであれば、間違いはありませんわ」
いや、間違ってる。間違ってるって。戦争を止めないのもおかしいし、俺を閉じ込めようとしていることもおかしいだろ!
思わず後ずさると、白の王は驚いた顔をしてから、けらけらと笑いだした。明らかに場違いな声なのに、誰もとがめる様子が無い。
「面白い!ホントきみ面白いよ!まさかこの僕から逃げようとするなんて!」
彼がそう叫んだ途端に、俺は踵を返した。柳崎が大声で何かを言いかけたが、白の王の声に消される。
「いいね!三分後、雉野に君を追わせよう!その方が面白い!その前に逃げ出せたら君の勝ちだ」
こっちは命ってか自由がかかってんだぞ?その必死の逃走を面白い?どこまでこいつは快楽主義者なんだ。
ともかく三分後までにでればいいんだ。そう思って王の間を出て出口を探す。が、解るわけがない。だよな、あんだけ迷ったんだもんな。
来た道を戻るのが一番早い。幸い何となくでも道は覚えている。
逆走し始めた時、同時に城の中に放送が流れる。
作品名:その穴の奥、鏡の向こうに・穴編 作家名:神田 諷