その穴の奥、鏡の向こうに・穴編
「君は悩んだ。何故か?」
え、戻るの?どう繋がってんだ?
解らずに、ぽかんと口を開けた間抜け顔で彼を見る。城の王は優雅に椅子から降りると、俺の前まで歩いてきた。
背が高いけれど、赤の王のような健康的な長身ではなく、「剣を振るえるのか?」と疑問に思うほどの細さである。年齢は赤と同じく、大学生かそれよりちょっと上。まあ、「若者」世代ではあると見えた。王というには、年齢体躯どっちを取っても少々不安が残る外見だ。
彼は俺を見下ろす形で、ニッと笑った。不気味というより、妙に無邪気だ。
「君はつまり、誤魔化そうとしたわけだ」
考えてることぐらい解るぞってアピールか?自慢じゃないけど、この世界に来てから皆が俺の心読めてるぞ!だからそれは自慢にはならない。・・・って言ってて悔しくなってきたけど。
白の王の言葉は、しかし思わぬ方向に続いた。
「それって要は、僕を謀ろうとしたわけだ!」
カチャッ
白の王の背後で、雉野が剣に手をかける。いや待て、早まるな。俺は誤魔化そうとはしたけど謀ろうとはしてないって!
作品名:その穴の奥、鏡の向こうに・穴編 作家名:神田 諷