その穴の奥、鏡の向こうに・穴編
「・・・で?君は誰?」
誰?と来たか。そう聞かれたら、何とかして誤魔化して紹介するしかない。アリスだとばれるのはデメリットが大きいっていうのは、赤の城で散々味わった。さて、ではどうやって誤魔化そうか・・・。と、思ったその時だった。
「ひゃはははははっ」
聞いた本人がいきなり笑いだした。え?何?何が起きたんだ?斜め前にいる柳崎は呆れた様子を見せているが、残りの二人は表情一つ変えずに白の王を見ていた。もしかして、置き物なのか?いや、息してるだろ、してただろ!なんで誰も突っ込まねぇンだよ!
「いいねぇ、悩んでる!悩んでるよ!」
悩むことの何がおかしいのか、俺には理解できないだが。
白の王はひょいと身を起こすと、俺のことを指差した。
「君のことは知ってるよ、知らないはずがないだろう?」
俺を指していた指で、そのまま柳崎と雉野を順に指す。
「奏と剣からしっかり情報をもらっているからね。彼らは僕に隠し事をしない」
さいですか。この人死ぬほどマイペースだぞ。俺の苦手な部類の人種だぞ・・・!
「でも」と白の王は続ける。唯一色を持つ金色の目が、ぐにゃりと歪んだ。
作品名:その穴の奥、鏡の向こうに・穴編 作家名:神田 諷