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その穴の奥、鏡の向こうに・穴編

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「それはすまなかった。奴らの勝手な行動にはこちらも手を焼いているんだ」
 今日はずいぶんと冷静なようだ。けれども、安心するのはまだ早かったようだ。
「しかし何故こんなところにいるんだ?」
 剣呑なまなざしが俺を射て、五寸釘を刺された藁人形のような気持ちになる。・・・解りにくいのは、百も承知だけど、俺の頭の中で「刺しとめられる」と言うのはそのイメージしかないんだよ。
 ディーとダムの不在に関して問いただされなかったのは、きっと客人放置もいつもの事なんだろう。
「その・・・で・・・出たいんだよ」
 しどろもどろに視線を逸らして答えた。まだ刺さってる気がする。まだ抜かれてない気がする。なかなか解放してくれない彼女の軍人として望ましいほどの警戒心は素晴らしい。が、こういうときは本気で泣きたくなる。
 しばらく時間をおいてから、彼女はふうとため息をついた。
「仕方ない、王の間まで案内しよう」
 そういって、思いのほか不用意に背を向けた。俺が嘘をついている可能性とか、そういうの考えないのかな?いや、確かに嘘でもないし、案内してくれるって言ってるのに無駄にするつもりは全くないんだけどさ。さっきの警戒とは裏腹にずいぶん不用心だなと・・・
「ここにはあいつがいるから」
 ビクッとした。まさか柳崎にまで思っている事を悟られるとは思わなかった。俺の考えってもう言葉として駄々漏れてるのかな?
 けれども、それは俺だからという解ったわけではなく、ただ単純にありふれた話だったようで、
「僕が背を向けると、驚く客人も少なくないんだ」と淡々と教えてくれた。