その穴の奥、鏡の向こうに・穴編
「白の城には特別なルールがあってね?」
「来城者は王族に謁見しないと帰れないんだ!」
なんだよ、その逆に簡単に謁見できちゃうシステム。王様そんなんでいいの?ってか暇なわけ?
けれども解った。それで俺が帰るって話になったのか。けど・・・
「いや待った。何で俺帰っちゃいけないんだよ」
そんな契約もしてないし、義理だって正直ないぞ。
すると二人はがっかりして俺の手を離した。そのまま案内でもしてくれるのかと思いきや、いーっと歯を見せて言い放たれる。
「「いいもん!アリスなんて迷っちゃえ!」」
珍しくそうハモると、二人はさっさと走り出す。慌てて追いかけたが、赤と違って白には曲がり角が多く、すぐ見失ってしまった。まぁ・・・どうせきっと、王の間とかは解りやすくなっているはずだ。
こっちの世界に来てからもどうやら動いているらしい腕時計によれば、あれから一時間が経った。が、真っ白な空間をむやみに歩きまわっている俺には、もう二、三時間は歩いているような錯覚に陥る。
本っ当に着かない。見つからない。いざとなったら誰かに聞くしかないかと思ったが、まさかの誰とも会えていないという今の事態。切なすぎる・・・
作品名:その穴の奥、鏡の向こうに・穴編 作家名:神田 諷