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その穴の奥、鏡の向こうに・穴編

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 それは「鍵がかかっていない」という確率だ。この世界は異世界だし、鍵をかけるという習慣自体がないかもしれない。鍵が付いているのは何らかの名残で、用途の意味はないとか。そう、ここは異世界だ。俺たちの常識が通じるとは限らない。
 従者二人は置物のようにずっと一方向ばかりを監視しているので、移動するなら今だ。きっと、公爵夫人の迎えを待っているとか、そういうところだろう。窓の下にもサツキかなんかの低木が植わっていて、その奥に入ればまた身をひそめられる。
 間違って従者の視界に入ってしまわないように、慣れない歩伏前進でずるずると目的地点へ移動する。そのあいだ、ずっと窓を見ていたのだが。
 ・・・?
 なんだろう。なんか違和感がある。何が違うってことはないんだけど、なんかこう足りない気がする。
 その違和感の原因がなんだかわからないまま、窓の下に着いた。無駄なスペースを最小限に減らすために、壁に背を付けて、首だけグイと上に向ける。真下から鍵を見ても、残念なことにやっぱり鍵はきちんとかかっていた。
 やっぱダメか。さて、どう侵入するべきか。就職試験の際に、自分が泥棒なら何処から侵入しますか、とかいう質問が出されるとか聞いたことあるけど、それが実体験になるなんて、普通のやつは思わないよなぁ。
 ブーンと、なんかの音がした。俺がサツキかもと思った低木林にまだ花はなく、蜂ではなさそうだけど。もしや、防犯システムが作動しちまったのか?
 不安にきょろきょろしていると、視界にふと何かが映った。
 ・・・木馬?
 小さな木馬に葉っぱが付いたような何かが、ブーンと音を立てて飛んでいた。こいつが有害なのか無害なのか解らないが、かみついてくることも刺してくることもなさそうだ。茫然と木馬バエを見ていると、すっと部屋の中に入って行った。
 あ、そうか。
 いまさらになって、先ほどの違和感の正体に気付いた。