その穴の奥、鏡の向こうに・穴編
「すごいね!良く言えたもんだ」
「ホントだよ!普通ならぶっ倒れてしまうよ!」
大げさだ。かなり大げさだ。この大げささが、ケンカを売ってきてるとしか俺には思えないんだけどな・・・?
眉間にしわを寄せて二人を見ると、流石に不機嫌さが伝わったのか、笑いと拍手を止めた。が、反省はしていないようだ。
「で、あたし達の能力なんだけどね」と謝りもせずに話題を戻してきたところが、そう感じた理由だ。正当だろう!
「お互いの場所を変えられるってこと」
そう言って、右に立っていた和希が笑うと、左に立っていた和樹も笑う。はぁとため息をついた、そのたった一瞬だった。
いつの間にか、二人の立ち位置が入れ替わっている。・・・が、これで驚けるほど俺は純粋な奴じゃないんだな。
「お前ら、今入れ替わっただけだろ」
「だからそれが僕らの・・・」
作品名:その穴の奥、鏡の向こうに・穴編 作家名:神田 諷