その穴の奥、鏡の向こうに・穴編
「バ・・・バタつきフライ?」
「そう。この辺で取れる貴重な食料よ?」
言わなかった。言わなかったけど、その顔には「常識でしょ?」と言う言葉が隠れていた。今の俺にとって屈辱的な言葉だ。ってか食料?動物じゃなくて食料って言ったか?食料も動くのかよ、この世界じゃ・・・
まずった。少なくとも俺は選択肢を間違えたようだ。だが、入ってしまったらしょうがない。
俺は努めて平然とした顔で話し出す。
「で、お前らの能力って何だよ?」
「「・・・開き直ったね」」
何でこういう時だけそんなに綺麗にハモるんだよ!悔しさに奥歯をかみしめながら、じっと二人をにらんだ。が、そんな視線を当然彼らが気にするわけもない。二人は「開き直ったね」とこちらがぶち切れ寸前になるくらいまで騒ぎたてると、いきなりクールダウンして冷静な口調で和希が答えた。
作品名:その穴の奥、鏡の向こうに・穴編 作家名:神田 諷