その穴の奥、鏡の向こうに・穴編
「「赤に敵認識されたら、百パー君は死ぬよ?」」
戦闘に不慣れな俺に、確かに逃げ道はない。でも・・・白の城に入るのも絶対よくない気がするんだよ。
悶々と考えていると、後ろの方でガサガサと音がした。振り返っても姿は見えないが、確実に何かいる。
「・・・ここ・・・こんな・・・ところに・・・居ないよな?」
だって敵陣の本拠地の前だぞ?どんな馬鹿が来るってんだよ・・・って思ってるんだけど、俺の常識はここでは通じない。通じないってことは、こんなところに来るバカも当然いる可能性がゼロとは言い切れないわけで・・・
しばらくの沈黙の後、またガサガサと音が鳴る。そしてまた静寂が訪れる。
びくびくしている俺に、後ろから声がかけられる。
「どうするの?アリス」「入らないの?アリス」
途端、ガサッと大きな音がした。情けないかなビビった俺は、思わずこう答えてしまったんだ。
「は、入るから待ってくれ!」
作品名:その穴の奥、鏡の向こうに・穴編 作家名:神田 諷